インバータベース電力系統

デジタルグリッドコンセプト

Inverter-based
Power System

既存の電力技術

電力系統は、発電機により交流電力を発生し、長距離送電線により、需要地に送り、配電網により需要家に供給する効率的なものです。
消費された電力は発電機の回転エネルギーにより供給され、その回転数を維持するために燃料が調整されます。この回転数は周波数と呼ばれ、電気は光のスピードで消費者に届けられます。この特性は素晴らしく100年以上にわたって世界で普及してきました。

既存技術の欠陥

しかし、逆に電力系統に異常事態が発生すると瞬時に全系統に伝搬し、大規模な連鎖停電が生じ、復旧が難しいという脆弱性が露呈し始めました。さらに太陽光や風力のような変動の大きな分散電源が大量に系統内に接続されるようになるとますます停電リスクが高まるようになりました。

インバータベース電力系統

太陽光、蓄電池、燃料電池、電気自動車などはすべて直流であり、これを交流に変換するインバータが必要になります。風力も近年はインバータを使うものが増えてきました。
日本は島国で外国の電力系統から孤立した系統ですが、瞬間的にはその半分以上の電力がインバータ電源により発電される状況となってきました。世界においてもインバータ電源の割合は急速に増えています。

慣性力・同期化力

交流系統の回転式の同期発電機は、回転体の中に電磁石が入っており、回転エネルギーが磁気を介して、固定子側の電線に送り出されます。電磁石の位置が全系統にわたって同期しており、少しでも位置がずれると電磁気力により引き戻されます。これを同期化力といいます。外乱が生じても回転エネルギーが変動を吸収して慣性により回転を継続します。これを慣性力といいます。

グリッドフォーミング技術

電力系統内のインバータはこのような同期化力や慣性力を持っていませんでした。そのため、インバータがたくさん系統に接続されるようになると、周波数や電圧の安定性が損なわれるようになり始めました。
そこで最近、インバータにこのような同期化力・慣性力を持たすことが必要となってきました。
これをグリッドフォーミング技術といいます。
グリッドフォーミングは太陽光などの変動電源の電力を既存系統の周波数と電圧に合わせて供給したり吸収したりして系統をサポートします。これは既存系統の回転式の同期発電機と同様の効果を与えます。このインバータ技術により、既存系統の脆弱性を補い、再エネの浸透率を大幅に増大することができます。さらに系統から切り離されてもインバータ群が同期して独立運転配電網を維持して、無停電なマイクログリッドを運転することができます。

系統全体におけるインバータ電源比率が約50%を超えると、慣性力が低下して周波数の変化率が大きくなり、連鎖的に電源が脱落する可能性があり、慣性力を有するグリッドフォーミング(GFM)インバータが必要とされている。

現状

  • 火力発電所等の同期電源が主力電源
  • 電源脱落事故発生時、同期電源の慣性力が周波数変動を緩和させる

将来

  • インバータ電源(非同期電源)が主力電源
  • 既存インバータ電源には慣性力がないため、電源脱落事故発生時の周波数変動が大きくなり、ブラックアウトの虞がある
  • 制御を工夫することで慣性力を提供するGFMインバータが必要となる

送配電網協議会資料
https://www.tdgc.jp/information/docs/5bc445f2c046a78e881ec2d4dd13a619fb1285fe.pdf